きょうの昼過ぎに、NTTとJR各社からとある発表がありました。

JR各社新幹線車両に備え付けてある公衆電話機が、今年の6月いっぱいで使用終了になるというのです。

そしてそれは、65年近くにわたる歴史を持つ列車電話の終焉を意味していました。

列車電話とは

今でこそ一人一台は携帯電話やスマホ等、誰でも電話を持ち歩く時代ですが、そうなったのは割と最近の話でつい30年くらい前まではみな公衆電話などで通信・通話していました。特に公衆電話は今現在でも非常時の連絡手段として主な公共施設には必ず設置されています。もちろん鉄道も例外ではありません。駅構内や改札内を含めいたるところに公衆電話が設置されており、その中でも列車内に設置してあるものは「列車電話」として普通の公衆電話と区別されます。

テレカ自販機と公衆電話

普通のスマホや携帯電話で列車の中から通話すると、都市部や平坦な区間ならまだしもトンネルや地下区間、そして山岳区間などでは一部つながりにくい場所では不便です。そのような区間でも列車電話はストレスなく通じるので長距離列車や新幹線などには必ず一台は設置されていたものです。また、列車によっては隣にテレホンカードの自販機が置かれている場合もありました。

新幹線の公衆電話は全国共通の形である

列車電話特有のサービス

列車電話は基本、車内から携帯、固定電話等の一般電話への一方行でしか通話できませんが、2004年までの一時期NTT管轄の公衆電話限定で、ある特殊な方式を用いたサービス、列車着信電話(107番)を行っていました。この方式は一般電話から指定列車の列車電話へオペレーターを介して取次ぎ、指定列車内の通話したい相手を呼び出せる画期的なシステムです。手数料がかかったり、列車到着15分から10分前までにかける必要があるなどの制約がありましたが、メール、SNSもない当時、特にビジネスマンの間ではかなり重宝されたようです。バブル期には、呼び出す相手もいないのに会社名と名前を連呼させて宣伝に使うという「カラ呼び出し」として悪用され、乗客から苦情が出ることもあったそうです。

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列車電話の歴史

鉄道車両内に公衆電話を初めて設置したのは国鉄ではなく、なんと私鉄の近畿日本鉄道でした。当時伊勢中川経由の名阪特急などに使われていた2250系・6421系電車に設置されたのが始まりです。当時近鉄は国鉄よりも先に日本初のサービスを次々に導入しており、二階建て電車や、シートラジオなどの設置もほぼ同じ時期でした。

6421系電車の末裔、大井川420系電車。2016年まで保存されていたそうな。Wikiより

それから3年後、遅れて国鉄も当時の東海道本線特急こだま・つばめに使用している151系電車に設置します。当時は無線を使用していたため、場所によっては電波がつながらない場所も多く、しかも通話可能なエリアは東京、名古屋、大阪の三都市圏に限定されていました。しかもこの電話機、ボタンどころかダイヤルもついておらず、電話を掛けるときは専用のオペレーターに直接電話番号を伝えて繋いでもらう方式でした。この方式は4年後に開通する東海道新幹線にも導入されますが、やはり東名阪の三都市圏でしか通話はできませんでした。これらの手間は徐々に改良されていき、東北・上越新幹線開業のころには既にダイヤル式の列車電話が設置されています。

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0系の公衆電話。100円硬貨専用である。写真はネットより

その後通信網の整備が進むと同時に、新幹線以外での列車にも設置が進むようになりました。民営化した後も国鉄時代の特急車両のリニューアルの際に設置されたり、311系などの通勤・近郊型車両にも公衆電話が設置される事例もあります。2000年代に入ると公衆無線LANも使用できる機体も設置されますが、このころからだんだんと携帯電話が普及し始めて、公衆電話の使用率が徐々に低迷していきます。

列車電話の終焉

2000年代前半から普及し始めた携帯電話に押されて、列車電話を含めた公衆電話全体の利用率が減少し始めていました。その影響で、列車電話の数が特急・新幹線からだんだんと間引かれていき、2012年までには在来線・私鉄から列車電話はすべて消えてしまいます。代わりに、携帯電話やスマホなどに使用する無線LANの設置をする方針へと転換する会社が増えてきました。ですが新幹線は長距離を走る上トンネル・地下区間や山岳区間を通ることが多いこともあって、在来線から列車電話が消えた後もしばらくは設置を続けていました。

ですが通信環境の度重なる改良の結果、ついに携帯・スマホでも安定した通信・通話が可能になったことから、今日の昼過ぎ、NTTとJR各社は今年の6月いっぱいで列車電話サービスを終了することを発表したのです。ここに、設置以来さまざまな改良を重ねつつ、乗客の通信・通話を支えてきた列車電話の歴史にピリオドが打たれることになったのです。

もし6月までに新幹線に乗る用が出来たのなら、もう間もなく役目を終える列車電話で記念に通話してみるのもいかがでしょうか。