岩手県の鉄道で山田線ばっかりネタにしてもあれなので他の路線もいくつか記事にすることにしました。新シリーズ「ガバガバ岩手ローカル線」これから不定期で更新していきます。

乗ろうぜ!DRAGONRAIL!

大船渡線は、JR東北本線一ノ関駅から気仙沼へ向かう鉄道線と、気仙沼から陸前高田を通り大船渡、盛を結ぶBRT本線系統+その他BRT支線系統からなるJRの路線です。気仙沼付近以外は全て岩手県を通る路線です。かつては盛まで鉄道一本で結んでいましたが、2011年の東日本大震災の影響で気仙沼から盛までの区間が被災。当該区間は収支も悪く、復旧するにしてもこんな赤字路線なんて運用するの嫌だから相当な年月を要する為鉄道の復旧を断念。同じく柳津ー気仙沼のほぼ8割の区間が被災していた気仙沼線と共に、残った路盤を専用道に再利用したうえでBRT化されています。

盛駅まで鉄道で行けた時代には、その特徴的な線形(後述)から地元住人から鍋弦線、ドラゴンレールとも呼ばれており、震災前はその名前を由来とした快速スーパードラゴン号が一往復走っていました(気仙沼から盛までは各駅)。また、山田線、釜石線と共に古くから開業した貴重な三陸方面に向かう鉄道路線であったため、国鉄時代にはスーパードラゴンの前身、急行むろねをはじめとする仙台・盛岡方面からの急行列車が多数運行されていました。

変な線形でもCHALLAーHEADーCHALLA…じゃない。

さて、快速の名前の由来にもなってしまうほどの線形と書きましたが、これは画像で見てもらったほうが分かりやすいと思います。

お手本のような「凸」の線形をしている…
こればっかりはリアス式海岸が絡むから仕方がない

はい。いかに変な線形をしているかが分かったと思います。二枚目は一部一般道を使用していること、リアス海岸が絡む地形であることからある程度の迂回は致し方ないのですが、一枚目はどう考えてもおかしいです。せめて下の国道沿いに行けばいいものを何をトチ狂ったのかきれいに90度近く曲がって摺沢を経由し、そして千厩でほとんど同じ横軸座標に戻って気仙沼を目指しています。

摺沢駅。

こんな線形になったのにはもちろん訳があります。大船渡線の開業が決定した1918年当時は、陸中門崎から千厩まで素直に直線で向かうルートでしたが、1920年に岩手県出身の宰相、原敬率いるクソ政党立憲政友会所属で立候補したとある政治家が摺沢地区で当選。大船渡線のルート変更を公約に掲げて立候補したため、当選後すぐさま同線のルートを摺沢経由に変更。そのまま直線ルートで大船渡に向かうルートで建設が始まりました。ところが…

Takashi Hara formal.jpg
↑ここら辺を東京駅で刺されて死亡、なお犯人はなぜか戦後まで生き延びた模様

自分の町に鉄道が来なくなると知った千厩の住民が、町の発展の為なんとしても大船渡線を自分の町に通したいと、これまた時の宰相(当時はまだ一政治家)の加藤高明率いる憲政会に頼み込みました。そして、来る1924年の総選挙の時、憲政会所属の議員が当選。そして大船渡線のルートはまたしても変更されるのですが、すでに摺沢付近まで建設済みだったので無理やり千厩に戻し、そこからは予定通り気仙沼経由のルートとしました。これがこの鍋弦線ルートの経歴です。自分の町に鉄道を引きたいという欲望に大きく振り回された大船渡線の事例から、ある造語が生まれました。

「我田引鉄」

自分だけの田んぼだけに水を引くことから転じて、自分勝手なふるまいのことを表す我田引水という四字熟語があります。それをもじって、政治家が自分の選挙区に線路を引き、代わりに票を集める様を表す言葉です。このような事例は大船渡線に限らず、日本各地の鉄道路線に見られ、割と最近建設された路線にも当てはまることがあります。とんでもない造語とともに生まれた大船渡線は、紆余曲折の末1935年までに盛駅まで開通し、山田線、釜石線と共に三陸連絡鉄道として重要な使命を担っていくのですが・・・

WE GOTTA PASSENGER…できない

戦後、仙台方面や盛岡方面からの急行も設定された大船渡線は一定の需要を確保しますが、いかんせん線形が悪いので、道路が改良されるにつれ、もともと並行する国道を通る最大のライバル、(というより相手にしてくれない)岩手県交通の一関気仙沼線、一関大船渡線に徐々に客を奪われていきます。頼みの綱の長距離需要も、盛岡方面はともかく仙台方面は1977年に気仙沼線が全通したこともあって半分に減ってしまいます。それでも東北本線との接続点一関で新幹線に接続してることもあり、わずかに残った需要で細々と生き延びて、民営化を迎えます。

長距離の乗客、おくれーっ!!

民営化後は新型車両キハ110系の導入や、急行から快速になったむろね号が後述の理由からスーパードラゴンに改名されたり、気仙沼線経由で仙台と南三陸を結ぶエース快速、南三陸号の盛までの乗り入れ開始も手伝って少しずつですが活気を取り戻していました。盛駅から釜石駅、そして山田線宮古駅から八戸線久慈駅まで三陸鉄道が開業したことにより、上谷地から八戸まで続く三陸縦貫路線が誕生します。

仙台駅(2006年7月)
wikiより転載。仙台から八戸まで三陸経由で走りぬいた伝説の快速リアス・シーライナー。
客「どこへ行くんだぁ…?」
は、八戸だぁ…三陸…経由で…
客「三セクの車両でかぁ…?」

大船渡線も気仙沼から盛までのルートがその一部に組み込まれ、一時期は仙台から三陸経由で八戸までぶっ通しで走りぬく長距離快速の運行もあったほどです。高速道路の開通に伴って、岩手県交通やミヤコーバスがなどが並行する高速バス路線を次々に開業させて、決して予断を許さない状況だったものの、この頃がJR時代の大船渡線の黄金期でした。ですが、その黄金期は一瞬にして崩れ去ることになります。

DAN DAN 路線縮んでく

2011年3月11日、戦後最大の震災である東日本大震災が発生、東北地方の太平洋沿岸部は甚大な被害をこうむります。特に宮城県、岩手県にまたがる三陸エリアは、リアス海岸特有の地形が災いして津波による被害がどこよりもひどく、もとあった街並みが分からなくなるほどの被害を受けました。同エリアを走る鉄道路線もほとんどの区間が流されて、長期不通を余儀なくされます。大船渡線もその中の一つで、気仙沼から盛までの海沿いの区間の内、竹駒から細浦までの区間が被災します。

津波の凄惨さを今に伝える沿線の気仙中学校跡。

ひどい所では線路の基礎ごと流されてどこを走っていたか分からなくなるくらいで、とてもじゃありませんがすぐに復旧なんて考えられる状況ではなかったそうです。それに加えて、気仙沼から盛までの区間は大船渡線の中でも一番の不採算区間。復旧したところで客が乗らなければ意味がありません。既に岩手県交通が同線よりも最短かつ人が多いエリアを通っていたので、大船渡線がなくなったところで不便に感じる人はほとんどいませんでした。

大船渡線がなくなってしまったので存在意義をなくした盛駅こ線橋。

それを踏まえて、JR東日本は同区間の鉄道での復旧を断念。しかし完全なバス転換ではなく、JRの切符で乗れて一部専用同区間を走るBRT方式とした上で、同じく被災した気仙沼線柳津ー気仙沼間と共通の運用を組む形でうまく丸め込んで廃止に持ち込んだ本復旧としました。気仙沼線区間も含めて本数は大幅に増便、快速便も新たに設置されるなどして利便性は逆に向上しました。ですがJRとしては残ったものの、大船渡に行かない大船渡線、気仙沼線に行かない気仙沼線がここに誕生します。そして去年の4月、気仙沼線柳津ー気仙沼間と大船渡線気仙沼ー盛間は正式に廃止となりました。そして現在に至ります。

乗車率たったの5か…ゴミめ。

アニメ「ドラゴンボール」との関係

少し時を戻して、今までドラゴンボール歴代主題歌に似せたようなタイトルを書いてきましたが、決して名前が似ているだけというわけではありません。民営化直後の大船渡線は、地元住民に大船渡線にもっと愛着を持ってもらおうと愛称を公募しました。おりしもその時期はドラゴンボールZが放映されていた時期。地元の小学生らがこぞって「ドラゴンレール」と応募したそうです。そして上述のとにかく曲がりくねった線形がまるで竜の形をしていることや、地元に竜の伝説もあったことから、大船渡線の愛称は正式に「ドラゴンレール」と名付けられたのです。そしてその愛称を基に、快速むろね号を快速スーパードラゴンに改名。名前だけ見ればめっちゃ強そうな列車がここに誕生しました。

ポッポルンガプピリットパロ!

震災後も一ノ関から気仙沼までの区間で運行を続けていたものの、(どのみち気仙沼以西は各駅)2013年のダイヤ改正で廃止。大船渡線は気仙沼線に次いで各駅停車のみの線区になってしまいますが、毎年特定の期間の土休日にほぼ同じスジで大船渡線を走る臨時列車、ポケモントレイン気仙沼が運行されています。ドラゴンボールが相性の由来となっている路線でポケモンをテーマにした列車が走るのはどうも不思議ですが、JR東日本はポケモン等の様々なゲームを販売している任天堂と深い縁があるので、あまり文句は言えません。もちろんドラゴンボールともコラボすることもあるのですが、できれば大船渡線でDBコラボキャンペーンをやってほしいものです。今後に期待しましょう。

「ポケモントレイン気仙沼号」(大船渡線折壁~新月間にて)
wikiより転載。この塗装は二代目である。

あとがき・筆者最大の後悔

実は私の父親の実家が陸前高田市にあり、子供のころから何度も訪れる度に大船渡線を見たものです。実家の庭からは被災する前の大船渡線が見える位置にあり、キハ110が盛や陸前高田方面に走っていくのをこの目で見ています。何とかして大船渡線に乗ろうと父親に掛け合ったものの、鉄道趣味に理解のない父親はかたくなに拒否。そしてそのまま、東日本大震災を迎えて、結局あの区間には乗らずじまいとなってしまいました…乗ろうと思えば乗れた路線に乗れずに終わった。これは10年たった今でも強い後悔が残る思い出で、筆者の鉄道に対する考えが大きく変わった出来事でもありました。

それを踏まえて読者の皆様に強く忠告します。もしあなたがふとしたことで目当ての路線に乗ることが出来るチャンスが来たら、絶対に逃さないようにしてください。たとえコロナで時期が悪かろうが関係ありません。もしそのチャンスを逃したら最後、災害などの理由で不通になって廃止もしくはバス転換となり、一生後悔する羽目になるかもしれません。「乗るは一時の損、乗らずは一生の損」です。皆様に同じ思いをしてほしくないのです。

もちろん、まだ未成年であるとかコロナなどの病気にかかった、などのやむを得ない事情があるならば無理強いはしません。ですが、そのような制約もなく、GOTOトラベルなどで乗りに行けるチャンスが目の前にきているのにそれをみすみす逃すのははっきり言って愚策です。なにかと長距離の移動で後ろ指をさされる時代になりましたが、感染対策を十分に行ったうえで、一鉄道ファンとして、後悔のない行動をお願いいたします。

EX:チャンスを逃さず日帰りだ!

旅行というものは時間がかかる、なんて某元総理みたいなこと思ってらっしゃるかたも多いようですが、日本全国の鉄道路線はすべて日帰りできます。

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