鉄建公団(田中角栄のおもちゃ)とは

日本鉄道建設公団、縮めて鉄建公団とは、国鉄の代わりに新線建設を行い、完成した鉄道施設を貸し付け、または譲渡することを目的に1964年に国と国鉄の共同出資で発足した公団です。2003年に鉄道建設・運輸施設整備支援機構として再編されるまで国鉄・JRのありとあらゆる路線を建設してきましたが、そのほとんどがどう考えても儲かりそうもない赤字路線ばかりで、これらの不採算路線を大量に押し付けられた結果国鉄は巨額の赤字を抱えることになりました。要は国鉄民営化の遠因です。

田中角栄 - Wikipedia
まぁ大体この人のせいなんだけど(Wikiより)

国鉄/JRだけじゃない!貴方の最寄りの私鉄にも

鉄建公団について主なファンのイメージは税金をつぎ込んでど田舎に高規格路線を建設した、というイメージが強いですが(大体あってる)、鉄建公団が建設した路線は何もすべて国鉄/JR向けの路線というわけではありません。

鉄建公団は路線を建設する際の路線規格を何種類か定めていましたが、その中でP線規格と言われるものは主に東名阪の三大都市圏において営業している民営鉄道(JRも含む)の路線新設、及び大規模改良工の際に適用される規格です。執筆の際に軽く調べただけでもかなりの数が存在するので主に関東・関西の民鉄線からそれぞれ三つずつ抽出してご紹介します。

ちなみにP線規格は札沼線(学園都市線)、筑肥線、福知山線などの民営化後のJR線改良の際にも適用されています。

小田急多摩線

多摩ニュータウン開発に伴って、そこから都心へ通勤するために建設されたいわゆるニュータウン鉄道です。今現在小田急線の中で一番新しい路線でもあります。ほぼ同時期に開業した京王相模原線延伸区間(こちらも鉄建公団建設線)と新宿方面への輸送でかなりいい勝負をしています。少し前までは新宿方面というよりは代々木上原から分岐する千代田線方面の直通列車がメインだったのですが、登戸ー代々木上原間の複々線化完了に伴い、新宿方面の直通列車にメインを移して今に至ります。

路線図
町田市公式HPより。相模原・上溝延伸の概要図

唐木田駅からJR相模原駅を経由して上溝駅に至る延伸計画がありますが、このうち相模原までは駅周辺の米軍施設一部返還に伴い、その返還された土地を活用して2033年までに延伸する計画が動き出しています。この相模原延伸の結果次第で上溝方面への延伸の可否を決めるそうです。

東急新玉川線(現田園都市線)

ニュータウン鉄道の代名詞として名高い我等が田園都市線。ですがそのうち鉄建公団が関わった区間は二子玉川から渋谷までの、いわゆる新玉川線区間のみとなっております。国道246号線のほぼ真下を通っていますが、桜新町駅の手前辺りから旧大山街道、というより旧玉川線のルートをほぼなぞるようにして二子玉川に至ります。その桜新町駅ですが実は上りと下りで階が異なる二層構造となっており、さらにその隣を通過線が通る変則二面四線構造となっています。

引退間近でも100キロ近くでぶっ飛ばすぜ!

もともとこの路線は銀座線の延伸区間として計画されていたのを変更し、二子玉川から三軒茶屋・渋谷を経由して永田町、九段下、大手町を経て中央区蛎殻町まで至る完全新規の路線として計画されていましたが、紆余曲折の末渋谷までは東急新玉川線として、渋谷から大手町の一部ルートは地下鉄半蔵門線として建設されています。両線は相互直通運転しているので実質一体路線とみてよいでしょう。

西武有楽町線

有楽町線小竹向原駅から新桜台を経由して練馬に至る西武有楽町線は、名前の通り地下鉄有楽町線に直通する為だけに作られたいわばアプローチ線です。たった三駅しかない路線ですが地下鉄池袋、有楽町方面に直通するすべての列車がこの路線を通るため本線の西武池袋線に勝る大幹線となっています。また副都心線の開通により渋谷方面、さらにはその先の東急東横線・みなとみらい線からも乗り入れ列車がやって来るようになった事でさらに重要性が増しています。

なお池袋線高架化の際にも鉄建公団が関わっている

基本的にこの路線を経由する列車は新桜台も含めて有楽町線各駅に停車しますが、副都心線方面に直通する快速急行(Fライナーも含む)や渋谷・東横線方面と豊洲方面にむかう有料座席列車、S-TRAINは新桜台を通過します。ちなみに新桜台以外の有楽町線の駅は全て接続先の路線の所属の為、これらの新桜台通過列車は事実上有楽町線を通過していることになります。

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京阪鴨東線

京阪電鉄が京阪本線三条駅を地下化する際に合わせて、三条駅から出町柳駅まで建設された路線です。事実上の京阪本線の延伸区間にあたります。三条ー出町柳間に鉄道を建設する構想はなんと戦前からありましたが、いろいろあって思うように進まず、鴨川大洪水に伴った京阪三条地下化に合わせてようやく鉄建公団によって建設されました。

出町柳に京阪が来るまで孤立無援だった叡山電車

本来の計画では出町柳駅で接続する叡山電車とも直通する構想もありましたが、輸送量に大幅な差があることから直通計画は見送られました。ですがこの路線の開業によって京都市電廃止以降ジリ貧の状態だった叡山電車がアクセスが良くなったことで乗客が戻り経営が一気に改善するなどかなり効果が表れています。

近鉄東大阪線(現けいはんな線)

沿線住民が増えるにつれて混雑が激しくなっていった近鉄奈良線のバイパス路線として建設されました。長田駅から大阪メトロ中央線に乗り入れてコスモスクエア駅まで直通します。長田から生駒までの区間を建設する際、近鉄は一旦東大阪生駒電鉄という子会社を設立しましたが、奈良線のバイパスを担わせるためあくまでも一体で運用するのが望ましいと考え、工事がほぼ完成した直後に同鉄道を合併して近鉄東大阪線として開業しました。これと同じ手法が上述の鴨東線でも利用されています。

ほぼ中央線と一体運用

その後生駒から学研登美ヶ丘へと延伸した際に、けいはんな線と改称しますが京都府にはあともう一歩のところで届いていません。新祝園駅延伸の計画もありますがなかなか建設にはこぎつけられていないようです。なお来る2025年大阪万博に伴い、今はコロナ禍の影響でいったん見合わせとなっていますが、近鉄奈良駅からこの路線を経由し、会場予定地の夢洲(コスモスクエア)への直通特急構想が発表されています。

北神急行北神線(現神戸市営地下鉄北神線)

神戸市営地下鉄新神戸駅から、六甲山の向こう側の神戸電鉄谷上駅を結ぶために建設された路線です。ちなみに建設にあたっては鉄建公団のほかに阪急電鉄も参画しました。ほぼ全線が六甲山地を貫くトンネルの中に存在しており、新潟県の第三セクター鉄道、北越急行の開業まではJR以外の鉄道で一番長い山岳トンネルだったそうです。北神急行時代は値段がとにかく高いことで知られており、三宮から谷上方面へ新神戸経由で行く場合、下手をすれば新開地経由の神戸電鉄よりも高くなることがありました。

右の車両が北神急行所有の車両。2020年までに消滅。

当然利用は低迷し、慢性的な赤字が続いたため2002年に鉄道施設を路線保有会社の神戸高速鉄道に譲渡します。そしてその18年後、運賃値下げで利用客の増加を図るために神戸市営地下鉄に北神線を譲渡することになります。民営化ならぬ市営化で運賃はようやく神鉄と対抗できるくらい値が下がり、乗客もそこそこ伸びているそうです。

探して乗ろう鉄建公団P線規格

この記事では関東・関西のP線規格の中からそれぞれ三つずつ抽出してご紹介しましたが、中京圏にも、名鉄豊田線や名鉄瀬戸線などの建設線があります。主に2003年までに高架化、地下化された民鉄区間は大体鉄建公団が関わっていることが多いので、もし思い当たる区間があれば鉄建公団が関わっているか調べて乗ってみるのも良いでしょう。