余命宣告を受けた奥出雲おろち号

去る5月の最終金曜日、JR西日本は重い決断を下しました。山陰本線宍道駅から出雲大東・木次・出雲横田を経由して中国山地の奥深く、芸備線備後落合まで至る木次線の観光列車、奥出雲おろち号を車検が切れる2023年度で運行終了すると発表したのです。

実は車検が切れるのはこのうちの一両だけなのですが、残りの車両も検査期限がほどなくして切れる為、2023年11月まで運行後にそのまま更新せずに終了する方針です。筆者もいつかは廃止になるだろうなと考え、つい4週間前に日帰りで乗りに行ったばかりなのですが、こんなに早く運行終了のアナウンスが来るとは正直驚きました。

老朽化には勝てない…

一番の原因は、老朽化。これに尽きます。奥出雲おろち号に使用されている機関車、及び客車は製造からすでに40年以上が経過している国鉄型車両で、内外装こそ小綺麗にしていますが経年劣化は隠しきれません。さらに西日本やその他JRに存在する同型車両からの部品調達も年が経つにつれて難しくなっていったこともあって、既に限界の状態だったそうです。

控え車はなんとリクライニングシート。

ちなみにおろち号と同じ12系客車を今現在動かしている会社はJR西日本のほかにJR東日本と秩父鉄道、そしてわたらせ渓谷鉄道の3社のみです。

おろち号で何とかつないだ25年

備後落合で接続する芸備線と共に広島と島根県を結ぶ陰陽連絡線の役割を持っていた木次線ですが、中国自動車道等の高速道路開通で乗客のほとんどを高速バスに持っていかれます。平成2年に唯一の優等列車、急行ちどりが木次線に来なくなってからは一ローカル線に転落しました。普通列車だけで見れば国鉄時代からかなり利用者が少なかった木次線はすぐさま存続が危ぶまれてしまいます。

JRもその状況を鑑みて、ちどり廃止から8年後に木次線の利用促進を兼ねたトロッコ列車を走らせることにしたのです。それがこの奥出雲おろち号でした。平成10年の運転当初は木次から備後落合までの区間のみの運行でしたが、思ったよりも人気が出たため、4年後には土日限定で木次から宍道を通って松江駅までの延長運転を行うようになります。さらには備後落合から芸備線にも乗り入れて三次、広島方面にもやってくることがあったそうです。

今現在は出雲市から来ているため宍道駅で方向転換する。

いつしかこの列車は木次線だけでなく、島根県全体の観光資源となり、この列車に乗るためだけに島根県に来るという客も少なくないそうです。私もその一人だった訳ですが。だからこそ今回の運転終了の報は、島根県や沿線自治体にとっても衝撃だったことでしょう。この案件について島根県知事が直々にコメントをするところからもいかに重要な観光資源だったかがくみ取れます。

おろち号亡き後の木次線に未来はあるか?

コロナ禍直撃でもそこそこ乗客を乗せて走ってきた奥出雲おろち号。その奥出雲おろち号がいなくなった後の木次線はいったいどうなるのでしょうか…

(PR)
AJRで、あなたの鉄道体験を世界へ発信しよう。
サポート体制万全。初心者でも大丈夫。

木次線の新規利用者はたった一人だけ…

おろち号以外の木次線の利用者は大きく分けて出雲大東、木次、出雲横田までの利用がほとんどで、横田以南の利用者の9割は県外からやってくる私を含めた「通」の方々です。18切符シーズンでもない限り混むことはないのでソーシャルディスタンスが余裕で取れます。混んでたら赤字になるもんか!

キハ120が木次線のメイン車両

木次から宍道までの区間が同線で一番利用者が多く、本数も2時間に一本程度とそこそこ頑張っているのですが、そこから南の区間はもう目も当てられません。この悲惨な状況を変えようと沿線自治体が団結して木次線利用推進協議会を発足。今年の4月から木次線を利用して、新しく通勤・通学する人をを対象に1カ月分の定期券代、もしくは11枚つづりの回数券代を負担するという出血大サービスの補助制度を行ってまで需要の掘り起こしを図っています。

ところが、このような大サービス補助制度を行ってもなお、新規木次線利用者がたった一人しか増えなかったのです。いかに木次線が窮地に立たされているかを思い知らされる出来事でした。このような状況でおろち号の運転を終了とか泣きっ面に蜂どころではありません。すぐに木次線もおろち号の後を追うことになるでしょう。

廃線も秒読み段階か

昨今のコロナ禍において、行動変容の影響で大打撃を受けている鉄道業界。無論JR西日本も例外ではなく、つい先日には本来の予定を前倒しにして、同社一番の稼ぎ頭であるはずの京阪神エリアも巻き込んで大幅な減便を含めた合理化にに踏み切ったばかりです。都市圏でさえこれですから地方路線はそれはもう大胆に大ナタが振るわれており、特に福井県の小浜線や越美北線は現状の約半数から8割くらいの本数減便を打診されています。

当然、合理化の中には路線廃止も含まれており、その魔の手は木次線にもやってくることでしょう。西日本どころか日本の鉄道ワーストレベルの赤字路線でありながらなんとかだましだまし生き延びてきたこの路線も、おろち号亡き後はいよいよ廃線へのカウントダウンが始まりそうです。(了)

EX:という訳で木次線に乗りに行こう。日帰りで。