収入のほとんどが電車<煎餅の銚子電鉄

JR総武本線の終点にして千葉県JR駅最東端の銚子駅からさらに東の犬吠埼方面に延びる千葉県最東端の私鉄、銚子電鉄。この鉄道は鉄道業は赤字まみれでからっきしですが副業の物販業はわりかし好調で、特に主力商品であるぬれせんべいは鉄道ファンなら一度は聞いたことある、見たことある、または食ったことのある煎餅として有名です。このぬれせんべいを含めた販売業がコロナ禍でも鉄道のほぼ5倍近くの差をつけるほど好調なことから煎餅屋鉄道、煎餅が本業で鉄道が副業などとといろいろな異名を付けられています。

煎餅で電車を動かしてるのはあながち嘘でもない

本業<副業は私鉄あるある

鉄道が本業のはずなのに副業の方がもうかっている、という事だけ見れば特段珍しいことではありません。大手、中小関わらず鉄道ではよくある話です。例えば我らが東急電鉄でさえ不動産業が鉄道業より儲かっているため、つい最近そちらの方を本業に据えて鉄道部門を子会社として分社化したばかりです。ほかにもその東急の経営方針に影響を与えた阪急電鉄や、あろうことか鉄道の大敵である自動車販売業がグループ全体の9割ほどを占める静岡鉄道、遠州鉄道等枚挙にいとまがなく、逆に鉄道一本で稼いでいる会社はJRを含めても数えるほどしかありません。閑話休題。

まあ静岡はクルマ社会だからね

煎餅はしょうゆ漬け、鉄道は補助金漬け

しかしいくら好調とはいえぬれせんべいだけで鉄道の赤字を補填できるわけがありません。経常損失を埋め合わせるために国や市からの補助金で損失の3/2を補填し、さらに雇用調整助成金やコロナ禍の持続化給付金であれこれ工面し、ダメ押しでぬれせんべいなどの販売業の売り上げを入れてようやく維持できるレベルの赤字に収まるのが日常茶飯事です。まさしくぬれせんべいと同じ状態にあると居ても過言ではなく、補助金という名の調味料を混ぜた漬け醤油に、銚子電鉄という煎餅がどっぷりと浸かっています。

昨日の(6/30)株主総会で放たれた耳が痛すぎる指摘

それでもなんだかんだでコロナ禍も乗り超えてきた銚子電鉄ですが、特に20年度決算で顕著になった万年補助金漬けのぬれせんべい体質を株主総会で指摘されてしまいます。発言者は、銚子電鉄の筆頭株主の男性の方。ただでさえ沿線住民の人口減少が著しい中、並行バスのほうが便利なので維持する必要性はほとんどなし、このような体質を続けてまで無理に鉄道を維持するくらいならいっそ鉄道業をやめて煎餅屋になったらどうかというとてもとても耳の痛い指摘でした。

ぬれ煎餅 > ぬれ煎餅(赤の濃い口味・10枚入) | 銚子電鉄オンラインショップ
銚子電鉄のぬれ煎餅のイメージ

このような指摘は今回に始まったことではなく、前にこの鉄道がTV番組に出演した際に共演タレントから税金の無駄遣い、とまで言われたことがある、と電鉄の社長自らが語るほどずっと言われてきたものだったようです。さらに、社長は自分のもう一つの職業である税理士の観点からみても銚子電鉄はあきらめたほうがいいと思うのは必然だ、と半ば自虐しています。社長にすらこんなこと言われるくらいですからもはやオワコンどころではありません。

正直言って公共性は0、しかし鉄道で存続すべき理由

事実上の煎餅屋鉄道なんて冗談のつもりが大真面目に株主総会で正真正銘の煎餅屋になれとまで言われてしまった銚子電鉄。ですが、どんなに赤字だろうと鉄道業をやめてはならない、と私はあえて擁護させていただきます。

(ここから下の文章は銚子電鉄のニュースが発報されてからネット上で不特定多数の方が同じような文章をつぶやいたりコメントしたりしてると思いますが、あえて同じ内容を書かせていただきます。)

ぬれせんべいだけで見れば同じような商品なんてそこら中にあります。中には銚子電鉄のそれよりも味がいいものもあるくらいなのに、そこへ中小私鉄上がりの企業が本業として挑戦したところで、すぐに亀●製菓やら越●製菓の同様な製品に潰されるのが関の山です。

煎餅と鉄道、どちらも欠かせぬアイデンティティ

ぬれせんべいのレベルでいえばそこまで高い訳でもないのになぜ、銚子電鉄のぬれせんべいはあそこまで売れているのか?

A:それは、銚子電鉄が販売しているから。

そもそもこのぬれ煎餅は銚子電鉄が赤字を補填する為に少しでも足しになれば、と始めた副業でした。しかしその間に「ぬれ煎餅買ってください。電車修理代を稼がなくちゃいけないんです」を中心としたいろいろな偶然や奇跡が重なっていつしかこのは銚子電鉄にとってなくてはならないアイデンティティになりました。(詳細はリンク先の解説で)

何よりもこのぬれ煎餅が、銚子電鉄の広告塔の代わりになって乗客を呼び込んでいる事実があるのです。このぬれせんべいにとっても、赤字の銚子電鉄が電車を動かすために販売している、という一種の付加価値さえなければ、そして上記のリンク先の奇跡の物語がなければ、ここまで売り上げが伸びなかったでしょう。

奇跡のぬれ煎餅特設ページより

即ち銚子電鉄と濡れ煎餅は、お互いがお互いのアイデンティティをなしている関係なのです。どちらが欠けてもいけません。電鉄の社長も、このことをわかっているからか、上記の指摘を重く受け止めた上で、鉄道事業をやめればこの副業も売り上げが激減するときっぱりと否定しています。そしてまだやれることはあると更なる経営改善に意欲を示し、地域貢献に力の限り努力すると語りました。

乗って、買って、食って、応援しよう

数々の存続の危機をぬれ煎餅で乗り越えてきた銚子電鉄。このコロナ禍もやはりぬれ煎餅で乗り越えようとしています。我々鉄道ファンが銚子電鉄にしてあげられることはわずかですが、少なくとも関東在住のファンがこぞって、ぬれせんべいを買って食べて、そして銚子電鉄を外川駅まで往復で乗りさえすれば銚子電鉄は当面は安泰だと思います。あと2年に迫っている銚子電鉄100周年まで生き永らえさせるためにも、銚子電鉄を応援しましょう。(了)