BRT先進国茨城県

昨今、新しいバス路線の形として日本を含め世界中でLRTと共に流行しているBRT。その概念自体はいくつかの日本のバスでも似たようなものが取り入れられていましたが、その中でもBRTに対して先進的な都道府県と言えば、茨城県の右に出る者はいないでしょう。

鉄道もなかなか多種多様

そもそもBRT(バス・ラピッド・トランジット)とは?

BRTについて言葉を知っていても意味が分からないという方も多いかと思いますのでここで簡単にご説明いたします。BRTはバス・ラピッド・トランジットの頭文字をとった略称です。基本的に「専用道を保有する速達性・定時性・輸送能力に優れたバス主体の高速公共交通機関」という概念となっています。似たような言葉としてLRT(ライト・レール・トランジット)、都市高速鉄道(レール・ラピッド・トランジット)等が存在しますが、これらの違いはベースとなる交通機関がバスか鉄道か軌道かだけであとはほぼ同じ概念となっています。

東京にもBRT路線が存在するが影が薄すぎる

その1:かしてつバス(旧鹿島鉄道)

茨城初、そして日本初の「BRT」路線

収入の柱であった燃料輸送が終了し、親会社である関東鉄道からの支援もTX開業の影響で絶たれた末に2007年に廃線になった鹿島鉄道鉾田線は、廃止後しばらくの間は並行する道路を経由する代替バスが運行されていましたが、車社会ゆえの激しい渋滞の影響で遅延が日常茶飯事となっていました。

鹿島鉄道石岡駅跡地

多発する渋滞からせめてバスだけでも回避させて定時性を確保するために、2010年に公設民営方式で鉾田線の石岡から四箇村駅までがバス専用道として石岡市・小美玉市によって整備されました。それに伴ってバス系統が再編され、この専用道を経由する「かしてつバス」が営業を開始しました。公設民営方式としては日本初の「BRT」路線です。

東京じゃ全く見なくなった形式だ

基本的にかしてつバスは石岡駅から専用道・小川駅・玉造駅を経由して鉾田駅に向かう基幹系統と、途中の小川駅で折り返す区間便に分かれているのですが、かしてつバスとは別の系統の、茨城空港連絡バス(石岡方面)もこの専用道に直通します。事業者は全て関鉄グリーンバスとなっています。

専用道は一車線、途中何か所かは行き違いの為広くなっている

廃線のバス転換モデルケースとして全国から注目

このBRTが画期的だったのは廃線になった鉄道をただバス転換するのではなく、一部区間をバス専用道にして鉄道時代と同程度の定時性を担保しながら、停留所などの増設で利便性を上げることもできるうえ、コストも削減できるといういわばバスと鉄道のいいとこどりの部分でした。地方の公共交通の一つの在り方を示したかしてつBRTの事例に学ぼうと全国各地から石岡市に視察に訪れており、実際に似たような方式のBRTが別の都道府県でも開業しています。その中の主たる例がJR東日本の大船渡線気仙沼線BRTです。

上の画像と同じ型のバスだ

そして、このかしてつバスを参考にしたもう一つのBRT路線が同じ茨城県に開業することになりました。

その2:ひたちBRT(旧日立電鉄)

茨城県の廃線転換BRT第二号

鹿島鉄道廃線からさかのぼること2年前、日本初のワンマン運転開始などあの手この手で合理化を図ってきた日立電鉄が努力むなしく廃線となります。日立電鉄亡きあとの日立市内の南北を結ぶ公共交通は常磐線とバスのみになったのですが、やはりここもクルマ社会なのでバスは30分遅延するのが当たり前となっていました。

日立ー多賀ー大甕の都市間輸送は今も昔も常磐線が主流

そこですでに一定の効果を見せていたかしてつバスの例を参考に、かしてつバス本格運行から一年後の2013年、日立電鉄線を転換したバス専用道を走るひたちBRTが開業しました。第一期と第二期に分かれて整備され、前者は大甕駅ー南武図書館(旧久慈浜駅)ーおさかなセンター間を2013年に、後者は大甕ー河原子(BRT)ー常陸多賀駅間を2019年に開業し、現在に至ります。専用道を通るようになったおかげで遅延の幅が30分から5分程度に短縮され、定時性と利便性が向上しました。

こちらも一車線の専用道、歩道が併設されている

専用道となっている区間は河原子(BRT)から南部図書館までの区間で、ひたちBRT以外のバス系統は乗り入れません。基本的には常陸多賀からおさかなセンターまで全線を走りぬく便がほとんどですが、常陸多賀駅ー大甕駅、大甕駅ーおさかなセンターの区間便も数本あります。また、専用道に並行するように歩道が整備されているのがかしてつBRTとの違いです。事業者は茨城交通となっています。

流石HITACHIのおひざ元、とにかく金がかかっている

BRTとしては初の自動運転も

このひたちBRTは全国に先駆けてBRTの自動運転実証実験を行ったことで知られています。去年の11月末に実証実験を始めたのですが翌月の14日に大甕駅付近にて誤作動を起こしガードレールと接触、しばらく中断していましたが今年の一月に実験を再開、そして予定通り今年の3月までに実験を終了しています。

確かここらへんで不幸にも白塗りのガードレールに追突してしまう

かしてつバス・ひたちBRTの延伸計画

これら二つのBRTは本格運行を開始していますが全通しているわけではありません。かしてつバスは四箇村から小川駅までの専用道区間が、ひたちBRTは常陸多賀駅ー旧鮎川駅ー日立駅方面の区間が未整備区間となっています。前者はまだしも、後者の方は旧鮎川駅以北の区間は完全新規の区間となるため着工に時間がかかっています。が、やはりこの区間も渋滞が激しい区間となっているため延伸区間着工にはそこまで時間はかからないと思われます。(了)

南部図書館周辺には、日立電鉄を思わせる意匠がちりばめられていた。