電化区間が全体の一割程度しかない路線たち

日本国内の鉄道路線は、2021年現在で全体の67%近くが電化されています。また、電化されているとはいっても必ずしも全区間電化されているわけでは無く、輸送が多い区間だけ電化してあとの区間はは旧来の非電化路線のまま、という電化非電化混在ケースも多々あります。

しかし、中には様々な理由からあまりにも電化区間と非電化区間の比率が極端すぎる路線も存在します。今回はその中でも電化区間が全体の一割程度、もしくは未満の路線をいくつかご紹介します。

そもそも電化区間が他社の管轄のパターン

タイトルを見る限り、田舎の第三セクター線がJR線との合流点から近くの拠点駅まで乗り入れるよくあるパターンだと思いがちですが、それはただの直通なので「ひとくち電化」ではカテゴライズできません。今回は、わずかな電化区間が他社の管轄だが運用上ほぼ自社の営業区間と一体化している区間をご紹介します。

鹿島臨海鉄道(JR鹿島線)

ほぼ毎日素通りされる境界駅

茨城県の鹿島と水戸を大洗・鉾田経由で結ぶ第三セクター鉄道、鹿島臨海鉄は、本来JR鹿島線の延長として建設されましたが、いろいろないざこざがあって国鉄・JR線としては開業できず、第三セクター線として開業しました。鹿島神宮や水戸で接続するJR線は電化しているのですが、この鉄道はある区間を除き全線非電化となっています。ただ建設当時は来る全線電化を見越して、高架区間等で架線柱の準備工事がしてあります。

それなりに利用があるから新型は3ドアのオールロングシート車両

さて、そのある区間はというと、鹿島神宮から鹿島サッカースタジアムまでの3.2キロの区間で、JR鹿島線と同じく直流電化の方式を取っています。というより、この区間はJR鹿島線です。スタジアム駅こそがJRと鹿島臨海鉄道の本当の境界となっていますが、全列車この駅を越えて神宮駅へ乗り入れます。

と、ここまで書けばただの直通運転だと思うかもしれませんが、この神宮ースタジアム間は、JR線の管轄でありながらJRの電車が特定時期を除き全く乗り入れません。なぜならこのスタジアム駅は臨時駅。隣接する鹿島スタジアムを本拠地とするサッカーチーム、鹿島アントラーズの試合が同スタジアムで行われる日以外はJRはおろか鹿島臨海鉄道も素通りします。

E131系も乗り入れるよ!

いくら境界駅とは言え、流石に臨時駅で折り返すわけにもいかないので便宜上神宮まで直通しているのですが、はたから見れば鹿島臨海鉄道の区間と勘違いしてしまいそうです。なお一応JRの区間という事で、18切符などでこの区間を越えて水戸方面に向かう場合、精算運賃はスタジアム駅からの計算となります。乗車の際はお気を付けください。

のと鉄道(JR七尾線)

電化区間どころか全区間借り物⁉

能登半島の第三セクター鉄道、のと鉄道は、なんと自社の路線を持っていません。七尾・和倉温泉から終点の穴水駅まで、全てJR西日本が保有する区間となっています。ところがややこしいことに、西日本は穴水から和倉温泉までは第三種鉄道事業者(路線施設の建設・保有のみを行う事業者)なのですが、和倉温泉から七尾までの区間は、第一種鉄道事業者(車両・路線施設一式を保有し、運行する事業者)の扱いになります。のと鉄道は全区間において第二種鉄道事業者(第一種又は第三種事業者が保有する施設を借りて営業する事業者)として七尾線を運営しています。

七尾駅ののと鉄道ホームは電化されていない

JR西日本が第一種鉄道事業者として君臨する和倉温泉ー七尾間、この5キロ弱の区間が問題のひとくち電化区間となります。この区間はのと鉄道七尾線とJR七尾線の共用区間。能登の代表的な温泉、和倉温泉の最寄り駅なので、北陸新幹線開業前は関西方面からの特急電車が、開業後は金沢駅直通の特急電車がこの駅まで乗り入れてきます。見方によっては「その1」のダブルパターンとも言えます。

しかし、乗り入れる電車はあくまでも特急のみ。JR七尾線の普通電車は手前の七尾駅で津端方面に折り返すので、JRだけで見ればこの区間は特急しか通らない区間となります。しかし、穴水からやってくるのと鉄道の気動車がこの区間の普通列車を受け持つため、特急料金不要特例は発生しません。全区間JR西日本が保有していますが18切符などでこの区間を乗車する場合、和倉温泉からは運賃上あくまでものと鉄道なので同駅からの運賃が発生します。

いちおうみどりの窓口はあった

このように何から何までとにかく面倒くさい存在となっているのと鉄道。なぜこのようにややこしい存在になってしまったのか、その経緯は下記の記事を参照ください。

EX:嵯峨野観光鉄道(JR山陰本線)

路線図はいつも正しいとは限らない

ちょっとした変わり種をご紹介しましょう。

山陰本線の非電化旧線区間を観光路線として転換した、日本初の観光専用鉄道、嵯峨野観光鉄道。風光明媚な保津峡は季節によって色とりどりの姿を見せてくれます。実はこの鉄道も、のと鉄道と同じく施設を借りて運行する第二種鉄道事業者で、トロッコ嵯峨からトロッコ亀岡までの区間は書類上JR西日本山陰本線の別線扱いとなっています。

この画像でもう答え出てる

路線図を見るとJR嵯峨嵐山からトロッコ嵯峨駅が併設し、そこからJR線と並行する形で保津峡へ向かっているから電化区間なんてかすりもしないのでは?と思いそうになります。(実際筆者もいざ乗ってみるまで気が付かなかった)路線図上ではその通りかもしれませんが、本当の所は違います。航空写真の方が分かりやすいのでGoogleマップで解説します。

まず、こちらはJR嵯峨嵐山駅の航空写真です。嵯峨野観光鉄道が発着するトロッコ嵯峨駅とは完全に分離されています。嵯峨野観光鉄道はここからトロッコ亀山へと向かうのですが…
視点を少し亀岡方面にずらしました。嵯峨野観光線が嵯峨変電所までのあたりで山陰本線現行ルートに接近しているのが分かります。変電所付近をわかりやすく拡大すると…
・・・接近どころか、完全に合流していますね。

そうなんです。嵯峨野観光線は、トロッコ嵯峨からトロッコ嵐山までの一部区間を、山陰本線の下り線と供用しているのです。その距離、僅か900m。多分このシリーズで紹介する普通電化方式を使用した路線の中で一番短い電化区間だと思います。航空写真ではこのように詳細が分かるのですが、ある程度簡略化された路線図などでは完全に分離しているように表記しているものがほとんどです。

そしてこちらは共用区間の終点、トロッコ嵐山駅付近。山陰本線現行ルートはトンネルで保津峡駅方面へ、旧線ルートである嵯峨野観光線は保津川沿いのルートへそれぞれ分岐します。わかりにくいですがホームの目の前にポイントがおかれています。
トロッコ列車だから換気100%!

これがもし別々の会社が管轄する鉄道なら路線図通りに別線でトロッコ嵯峨へ向かっていたのでしょうが、山陰線や嵯峨野観光線は全てJR西日本管轄、並びに嵯峨野観光鉄道もJR100%子会社だからこそなせる技なのだろうと思います。この路線を使う機会があれば、トロッコ嵯峨からトロッコ嵐山までの路線図だけではわからない短すぎる共用電化区間を体感してみてはいかがでしょうか。