「特急列車」と「夜行列車」、この二つの顔を持っていた車両が「583系」でした。2017年4月の運転を最後に完全な引退となってしまいましたが、今回は引退前の2016年7月8日~9日にかけて運行された団体列車での旅をお届けします。最後までごゆっくりお楽しみください。

・昭和の風情が平成に蘇る! ~臨時寝台特急「はくつる」~

 常磐線特急が主に使用する上野駅17番線ホーム。この日は多くの鉄道ファンでごった返していました。というのも、この日は国内に1編成のみ運行されていた秋田総合車両センター所属の583系が十数年ぶりに東北本線を走行する光景が見られるということで、それを聞いた鉄道ファンたちがベストショットを求めて出発駅である上野へやってきたということです。

 583系の正面中央に掲げられているヘッドマークの幕には「はくつる」のシール幕が貼られていました。今回のツアーで583系が上野~青森間の運行を担当することに伴い、JR東日本はかつて同区間を走っていた寝台特急「はくつる」のマークを掲げるという嬉しいサプライズをしてくれました。

 今回のツアーで私が乗車したのは、3号車モハネ583-100でした。ご覧の通り、車内の通路は人1人がやっと通れるほどの狭さで、奥から来る乗客とすれ違う時は「あっ、すいません。失礼します~」という感じで一声かけないと通れないほどでした。

乗車してから約10分後、大きな警笛を鳴らし、鉄道ファンの歓声の中、583系臨時寝台特急「はくつる」は青森へ向けてゆっくりと上野の駅を出発しました。

・車内紹介/乗車レポート

 また今回のツアーで私が宿泊したのは福島・仙台方の14番中段ベッドでした。幼少期の頃、583系のビデオを見ていた私は、中段ベッドを「秘密基地みたい!」と思いワクワクしていました。しかし、実際に入ってみると、基本は横になることしかできず、最低でもしゃがんで撮影するのが限界の高さでした。簡易的なアメニティとしては「JR」のマークがたくさんあしらわれた浴衣とプラスチックのハンガーがありました。

浴衣の素材とデザインはJR化後も活躍していた寝台特急や夜行列車のベッドに必ず用意されていたものでしたので、今回着ることが出来てとても嬉しかったです。

 中段ベッドから見た景色はこんな感じでした。成人男性の平均的な身長(170cmくらい)の目線の高さに中段ベッドがあります。ベッドの広さは下段が2人分(2人用ボックスシート)、中/上段ベッドは1人分のスペースでした。ただ中段ベッドの唯一の難点は、「寝返りができない」ことでした。

 中段ベッドの窓はスライド式の開閉操作が可能で、窓ガラスとベッドの壁の間に若干の奥行きがありました。個人的にこの奥行きが防音構造を作り出している要素の一つではないかと考えられます。

 こちらが乗車した際に乗務員の方からいただいた記念乗車証です。国鉄時代には一般的だった乗車券のデザインになっていました。

 時刻は18時半過ぎ。列車は栃木県の黒磯に到着していました。

黒磯では直流/交流の切り替えが行われましたが、583系は黒磯を出発してから一定のスピードを出した状態での交直切り替えができないため、黒磯に停車中の状態で切り替えを行いました。

さて、今夜私がいただいたのは、上野駅で購入した「チキン弁当」でした。(≒Uber Eats)

午後9時半すぎ、列車は郡山に到着しました。奥には磐越西線の普通列車が停車していました。

午後10時45分、福島に到着しました。奥に停車している車両はE721系でしょうか。すでに本日の運用を全て終え、車内の照明を消して休んでいるようです。

私のいる3号車も、ほぼ全ての乗客がカーテンを閉めて眠りについているようです。こういった光景こそ「夜行列車」でしか味わえない風情ですね。それでは私も。おやすみなさい💤

・目が覚めるとそこは…!

おはようございます。時刻は午前5時12分、私は列車がゆっくりと止まる軽微な振動で目を覚ました。気がつくと八戸まで来ていました。駅のエスカレーターの側面に貼られた鉄板には583系がぼんやりと反射していて「自分は本当に寝台列車に乗っているんだ!」と実感しました。

 八戸を出発すると、このような田園風景が広がっていました。ビルが多く立ち並ぶ大都会から緑の多い地方へと駆け抜ける、夜行列車の魅力はこういった景色の移り変わりにもあるのではないでしょうか。

八戸からは「青い森鉄道線」に入り、終点の青森を目指します。

青森到着前、進行方向左側に青森貨物ターミナルとそこから出発した貨物列車を見ることができました。

午前6時20分ごろ、臨時寝台特急「はくつる」は上野から約15時間の長旅を終えて、終点の青森に到着しました。ここまでお疲れ様でした。そして感動をありがとうございました。

結び:スターの復活

「はくつる」が東北本線から姿を消したのは2002年(平成14年)。東北新幹線が盛岡から八戸まで延伸開業したためでした。しかし廃止から14年の時を超えて再び「はくつる」のマークが見られたことは本当に嬉しかったですし、私自身583系に乗れたこと自体が人生で初めて寝台特急に乗った旅でした。ですので今回一度きりでも「復活」してくれたことは本当に嬉しかったですし、私自身583系に乗れたこと自体が人生で初めて寝台特急に乗った旅だったので懐かしいというよりかは新鮮な経験ができました。

今回は「団体列車」という形でしたが、自分の中で素晴らしい体験になりましたし、自信にもつながりました。ありがとうございました。

・駅の隣に残る錆びた桟橋と黄色い船の正体は?【予告】

青森の駅を出ると足下にはレールが残る錆びた桟橋、そしてその先には黄色い船。あの船はもしかして…!

詳細は次回の記事で「あの船」を中心に詳しくご紹介したいと思います!

著:大門 希平