今年動き出した羽田空港アクセス線計画とは
羽田空港アクセス線とは、今年の1月に国土交通省から事業許可を受けた上で、JR東日本が2029年度までに開業を予定している、山手線田町駅付近から東京貨物ターミナルを経由して羽田空港へと向かう路線です。途中の東京貨物ターミナルまでは大潮線という休止された貨物線を改良の上で利用します。また、JRはこの路線を中心とした羽田空港アクセス構想も同時並行で計画しており、そのうちの西山手・臨海部ルートには東京臨海高速鉄道りんかい線とJR京葉線が活用される予定となっています。

都心の空港アクセスで私鉄の後塵を拝するJR東日本
この羽田空港アクセス線が開業すればJR東日本はようやく羽田空港に直接つながります。それは即ち成田空港ともJRだけで繋げることになるというわけですが、ご存知の通り都心から両空港へのアクセスはすでに京急・都営・京成・北総の四社直通のエアポート快特、及びスカイライナーの一人勝ちとなっており、JRは殆ど存在価値がありません。私鉄しかアクセスしていない羽田はまだしも、成田方面は料金・速度・本数全てにおいて敗北しているという体たらくで、せいぜいジャパン・レールパス利用の外国人乗客だけが頼りでしたが、このご時世なので外国人客はほぼ消滅、正直オワコン状態になっています。

予想:例え開通したとしても現状維持、でも新規需要は望める
では、今回の羽田空港アクセス線開業で果たしてJRは空港アクセスにおいて覇権を握ることが出来るか・・・と言われたらそうは思えません。ただ、新しい利用者は開拓できると思います。
現時点で羽田空港に行く際に一番便利なのは京浜急行です。羽田空港から品川まで300円という破格の値段で他のアクセス手段と大きく差をつけているほか、羽田空港を発着するほとんどの便が品川・泉岳寺を越えて都営地下鉄に直通するので都心各地へ乗換え挟めど改札挟まずに直行できるので利便性も勝っています。

一方この羽田空港アクセス線は仕方のないことですがJRの路線しか使えない為、長距離にターゲットを置くならまだしも首都圏近郊のきめ細やかなアクセスはどうしても期待できません。なのでこの羽田空港アクセス線が開業の暁には埼玉県や北関東エリアなどの既存の私鉄では届かない、今までバスに頼るしかなかった、もしくはバスさえもなかったエリアからの需要が主な利用者層になるだろうとみています。
価格面ですが、東京貨物ターミナルから羽田空港までの新設区間の建設費用、及び大汐線の改良費を回収するために同路線には加算運賃が設定されるとみています。似たような事例として京急も空港線延伸の際に天空橋から羽田空港の区間に加算運賃を設定しています。こればかりは避けられない事柄ですが、この路線は大汐線も含めたほぼ全区間で改良・新設工事を行っているため、京急の場合よりも加算運賃が高く設定されそうです。とはいえ高くしすぎるとも思えないので高くても京急品川ー羽田空港と同等くらいだと筆者は想定します。

この加算運賃がある程度回収できればやはり京急の時と同じように加算運賃の設定を引き下げて京急利用よりも安くすることもなくはないでしょうが、例え順調に利用者が推移したとしても加算運賃引き下げは少なくとも10年くらい先の話になります。とはいえ既に覇権を握っている四社から奪える利用者はたかが知れているのでやはり上記のようなバス頼み及びバスもないエリアからの新規需要をどれだけ獲得できるかが重要です。
この路線開業で一番割を食う東京モノレールはどうなる?
さてこの羽田空港アクセス線は、予定ルート図を見てもわかる通りほとんどの区間で浜松町から羽田空港に向かう東京モノレールと並行しています。東京モノレールは一応私鉄ですがJR東日本の子会社で、羽田空港への対京急対策としてルートを変更したりノンストップの空港快速を走らせたりとありとあらゆるテコ入れが図られてきましたが、今回のアクセス線建設が開始されたことにより、東京モノレールはよりにもよって親会社自身にお株を奪われることが決定してしまいました。羽田空港はいわば日本の玄関口でもあるため、輸送力に「遊び」を持たせる観点から考えて、流石に廃止は絶対ないとは思われますが、あくまでもメイン路線である羽田空港アクセス線の補助がこれからの役割となりそうです。(了)
