銚子電鉄。千葉県の東端、銚子市を走る1本のローカルな鉄道路線である。
今でも昔行われていたタブレット交換が頻繁に行われるこの路線。非常に「昭和」を感じられる路線だ。
さて、このローカル線を運行し管理する銚子電気鉄道株式会社。実は今、とんでもない危機に立たされている。2014年の営業係数は238.1。おそらく今はもっと高いだろう。
これはつまり何を意味するかと言うと、100円稼ぐのに238円必要とする。もっと大きな規模でいえば、1億円稼ぐのに2億3810万円必要なのだ。
一日当の運賃収入はなんと4480円。社員1人の日当にすら満たないというのが現状である。
通学などの時間帯はまぁまぁ混み合うが、それ以外の時間帯は客がおらず、閑散としている。
観光地もあるが、なかなか客が伸びない。
今日は、そんな銚子のローカル線の話だ。駅ごとの特徴や見どころ、観光地と行ったところから車両などの情報、そして経営状況や他の取り組みなどについて幅広く解説していこう。
各駅の特徴・データ
まず、各駅の特徴から解説をしていくことにする。
銚子駅 (CD-01)
この駅は、銚子電鉄の起点であり、JR線との乗り換え駅である。JR総武本線・成田線と乗り換えができ、銚子市の中心駅として名が高い。
東京始発の特急わかしお号も発着し、繁忙期は賑わっている。

共同管理駅であるもののJRの管轄となっており、銚子電鉄はJR2番線の一部を使用している。なので銚子電鉄の駅舎はホームの上に建っており、営業上「4番線」と案内される場合もある。

駅の愛称は「絶対にあきらめない 銚子」。崖っぷちの経営状況の中で懸命にどうにか会社の命を繋ごうとする銚電の姿勢が強く感じられる。
乗車人員は1日384人(2018年)。JRと比べるとかなり少ない。
駅周辺は市最大の市街地となっている。
仲ノ町駅(CD-02)
銚子の次、仲ノ町は乗車人員こそ20人と少ないものの、銚子電鉄の中で銚子駅の次に重要な駅とも言えよう。
仲ノ町駅には銚子電鉄本社、そして銚子電鉄車庫がある。
本社や車庫と言っても立派なものでは無い。小さく悪い言い方をすれば粗末なものだ。

しかし、小さいからこそ出来ることもあり、なんと入場料の150円を払えばなんと車庫見学が出来るのだ。
見学できるのは8:00~15:00だが、それにしても見学が常時可能な鉄道会社というのもなかなか珍しいものだ。
また売店もあり、ここでは銚子電鉄名物であるぬれ煎餅やまずい棒等も販売している。
駅の愛称は「パールショップともえ」。パチンコチェーンらしい。
観音駅(CD-03)
観音駅は無人駅。
無人駅だが元々は市内中心部ともなっていた駅で、現在では鉄道事業の収入を超えてしまった食品販売事業の始まりとなった地でもある。
昔有人駅だった頃はここでたい焼きを売っていた。外川駅や犬吠駅で注文してから途中のここ、観音駅で受け渡すサービスなどもやっていたそうな。
駅舎はスイスの登山鉄道風となっており、非常にお洒落で風情がある。今風で言えば「映える」「エモい」と言った言葉を使えばわかりやすいだろうか。

ただ、乗車人員はわずか74人。周辺は旧市街地で銚子市立病院や円福寺観音堂などもある。そのおしゃれな駅舎なども宣伝しながらもっと頑張って欲しい。
本銚子駅(CD-04)
駅名は「もとちょうし」。ほんちょうしと読んでしまいそうだがそうではない。だが駅の愛称も「ほんちょうし」に則って「上り調子 本調子 京葉調和薬品」となっている。
駅は林の中にあるが、駅の近くには飲食店の集積地となっている。スナック、そして漁港があるからか居酒屋と寿司屋が多い。
駅の利用は付近の清水小学校の生徒が多く、乗車人員は1日88人。
また、駅舎は24時間テレビでヒロミさんが改修したものとなっており、周辺の林も相まってモダンでオシャレな雰囲気を匂わせる。

無人駅だが、活気を感じさせられる。
笠上黒生駅(CD-05)
さて、銚子電鉄といえば忘れてはいけないのがこの笠上黒生駅。運行に欠かせない交換設備が唯一ついている駅だ。(仲ノ町にもあるが客扱いはしていない。)

二面二線の有人駅でありある種のターミナル(?)になっている。最悪終点と起点以外全部廃止しようとしても、この駅と仲ノ町だけは廃止できない。
タブレットを使った交換を行う。交換形式に関しては知識が全くないのでご自身で調べて貰えるとありがたいのだが、とても珍しいらしくホーム上で列車の車掌(運転手)同士がタブレットと呼ばれる物体を交換し合うという非常に原始的なものである。
駅愛称「髪毛黒生」。何だか中年のおじさんに似合いそうだ。
西海鹿島駅(CD-06)
この駅は特にと言った特徴はほかの駅に比べれば少ないのだが、このホームと小さい待合室、そして明らかに場違いな自動販売機は面白い。
旅情をそそり、行ってみたい所のひとつだ。

またあたりは1面キャベツ畑となっていて、その他小規模な住宅街などが拡がっている。ただ利用者は少なく1日28人。相変わらず少ない。
駅愛称は「見えない事で、未来を拓く。アシザワ・ファインテック」。企業広告だ。
海鹿島駅(CD-07)
さて、西海鹿島があるのだから海鹿島も当然忘れてはならない。
この駅は、関東地方最東端の駅となっている。あくまで関東地方である。

千葉の先端に位置するのでまぁ当然だろう。テレビとかアーティストのロケとかでも使われているらしく、そこそこ有名(?)らしい。
何故海鹿島という地名なのか調べてみたところ、この近くにある海鹿島というところには明治まで実際に海鹿(あしか)が住んでいたらしく、この地名が付けられたとの事。
無人駅ではあるが、銚子電鉄では中心的な駅の一つである。(乗車人員88人)
駅名称は「関東最東端より銚子港直送 千葉石毛魚類」。銚子の魚と関東最東端を売りにしている。
君ヶ浜駅(CD-08)
君ヶ浜駅。銚子の中でも絶景である君ヶ浜海岸の最寄駅である。昔は保養地としても賑わっていたそうで、鮮やかな海が望める。
駅愛称は「ロズウェル」。市内での未確認飛行物体目撃情報が沢山あったことや、それによる地域おこしなどからアメリカのUFOで有名な地名「ロズウェル」にかけて株式会社ミストソリューションが命名権を獲得しつけられた。
昔はアーチが架かっていたそうだが、今は柱のみが残され少し寂しい。
昔は駅猫「みきちゃん」がいたそうだが、亡くなってしまい今は記念碑が建てられている。
犬吠駅(CD-09)
犬吠駅は有人駅で銚電の拠点駅のひとつである。
利用が多く、正月には周辺の「犬吠埼」への初日の出参りのため終夜運転で賑わう。
周辺の観光拠点にもなっていて、駅舎は大きい。2階には鉄道写真家である中井精也さんの写真館がある。
昔は燈台前という駅名だったのだが、改称される前にまた別の犬吠駅(旧)という駅があったそうな。
乗車人員は114人。駅愛称は「OTS犬吠埼温泉」。沖縄ツーリストが命名権を獲得している。
昔はポルトガル風の駅舎で、関東の駅百選第一回にも認定されていた。

外川駅(CD-10)
銚電の終点である外川駅。読み方は「とかわ」だ。
駅舎は修復しながらも開業時から建つ木造平屋。非常に年季を感じる。

駅周辺には郷土資料館、郵便局、神社や海水浴場があり、海に近く周辺には漁村がある。
外川の街並みは日本遺産に指定されている。
駅構内には、銚子商業高校の生徒による「銚商夢市場プロジェクト」の一環で腐食が進んだデハ801が修復されて設置されている。
車両
デハ2000形
2001編成、2002編成の2編成が在籍する。
京王2010形→伊予鉄800形という変遷を経てから銚電2000形となっている。
京王3000形を購入する計画だったのだが、電圧など様々な理由で頓挫し、同じ京王3000形を購入する予定となっていた伊予鉄から800形を譲り受ける形で導入された。
銚電では初のドアチャイムや冷房が設置された形式となっているが、変電所容量の関係で冷房は銚子・外川到着時のみに制限されている。
2001編成は元の色がライトグリーンであったが、青を基調とした塗装に変更された。
2002編成は過去にイオン銚子の広告ラッピング車となっていて、その後紺色・赤色の塗装に変更された。2014年の事故の際に走行不能になったが、銚子商業高校の生徒によるクラウドファンディングで資金が賄われ、修理がなされた。
デハ3000形
3000形は2016年から使用されている新型車両である。(製造からは既に50年以上)
前身は京王5100形、その次に伊予鉄700形として使用された後、銚子電鉄へと渡った。
車体色はかつて存在したトロッコ列車、ユ101の「澪つくし号」をモデルとした銚子の海をイメージしたものとなっていて、爽やかである。

デキ3
そしてこれは営業列車としては使われていない。ではなぜ解説に含めたのかと言うと、動態保存されていて使おうと思えばまだ使えるかもしれない、そして1067mmの電気機関車としては現存最小(4.5m)という特徴を持つからである。
ドイツーアルゲマイネ社で1922年に製造され、宇部の炭鉱で使われていたが1941年に銚電に移籍。
石炭輸送やヤマサ醤油への原料塩の輸送、たまには客車の牽引なども行っていたが、1984年に引退。その後は有志による動態保存が行われ、今は仲ノ町にて150円の入場料を払えば車庫見学と同時にこの車両も見ることが出来る。

銚子電鉄の経営状況・取り組み
さて、ここからは今の銚電がどれだけ崖っぷちか、そして頑張って生きる銚電の様々な取り組みについて解説をしていく。
まず、先程も話した通り一日の鉄道事業の総収入が4480円。おそらくその他の定期客の一日当の運賃を含めても社員の収入は補えない。
そして営業係数は238.1(2018年)と大赤字である。100円を稼ぐのに238円、つまり2倍以上のお金を要するため、かなりの大赤字となっている。
ということで、鉄道事業ではもはや会社としての維持ができないほど大赤字なので、銚子電鉄は様々な取り組みを行っている。
ぬれ煎餅・まずい棒などの食品販売
実際これらで得てる収入の方が遥かに多く、株主総会では鉄道業から米菓製造業にした方がいいとの声も出たくらいだ。
ぬれ煎餅は銚子を代表するせんべいで、今では銚電の代名詞と言っても過言ではないほど有名だ。
仲ノ町駅構内にあった変電所が移転し、その跡地に今は工場が作られており、犬吠駅では実演販売も行われている。
2006年、上層部の不祥事や度重なる赤字が相次ぎ、もはや法定検査や運転資金まで不安定となった銚電。
自社のウェブサイトで「電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです」と書き込んだところ、ネット掲示板「2ちゃんねる」などで爆発的な流行(いわゆるバズるってヤツですね)を見せ、さらにはテレビ等のマスメディアにも取り上げられるようになり一時期は注文受付中止になるほど予約が殺到した。この書き込みに書かれた文章は「現代用語の基礎知識」にも収録されるほどであった。
まずい棒は、2018年にぬれ煎餅の売れ行きが伸び悩む中販売を始めたもので、実際はうまい棒のコンポタージュ味のような結構美味しいものとなっている。名称由来は「経営状況がまずい」からとっている。
2019年にはチーズ味の販売を始め、銚電のぬれ煎餅に次ぐ看板商品としてかなりの好評である。
これらは銚子駅、仲ノ町駅、犬吠駅、外川駅などで販売してる他、オンラインショップでも販売をしている。
映画「電車を止めるな!」
2019年に寺島広樹さんにより作られた小説で、2020年に銚電が映画化した。
クラウドファンディングなど様々な方法で資金をかきあつめ制作費2000万円で映画が作られた。鑑賞券には一日乗車券などもついており、実際に乗車するのにも大きな期待がある。
興行収入や映画による宣伝効果での経営改善を目的にしており、もはやなんでもやると言った状態だ。
電車を止めるなという名称は皆さんお気づきの通り「カメラを止めるな!」という映画のパロディーのようなもので、キャッチコピーは「超C(銚子)級映画」。とても面白そうである。
公式YouTubeチャンネル
登録者6.4万人を誇るYouTubeチャンネルは、非常に好評で、日々の様子や宣伝など、様々な内容があり面白い。

銚子電鉄のためにも、このチャンネルを知った方は是非動画を見る際は広告を最後まで見ていって欲しい。(その方がお金になる)
割と頻繁に更新されていて、銚電がこれにかなり注力しているというのも見受けられる。
まとめ
いかがだっただろうか。
銚電の魅力などをこれで知ってもらえて、少しでも銚電のために動いてくれる人がいればこれ程鉄道ファンとして、いち銚電ファンとして嬉しいものは無い。
ぜひ、赤字鉄道でありつつも頑張る銚電の力になる方が増えてくれることを願いながら、この記事を締めさせて頂きます。ここまで見てくれてありがとうございました!
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