株主が銚子電鉄の廃線を提案

6月30日付の朝日新聞デジタルの記事によると、株主総会の中で株主が「そろそろこの辺で鉄道事業を見直した方がいいのではないか」という趣旨の発言がなされたという。これに対し、銚子電鉄の竹本社長は「まだやれることはある」と経営の改善に意欲を見せたという。

銚子電鉄といえば

銚子電鉄といえば、全国のメディアでも取り上げられるほど「ギリギリ」な鉄道会社として有名だ。車両は、「中古の中古」の車両を使用し、本社は築百年越え、破れた制服をパッチワークで修理するなど本当に鉄道会社なの?と疑ってしまうほど、本当に「ギリギリ」である。

YouTubeチャンネルでも経営危機を前面に押し出す

鉄道事業を捨てると煎餅屋に!?

銚子電鉄の本業は「煎餅屋」。嘘のようだが、本当の話である。銚子電鉄のオンラインショップでは、特製のぬれ煎餅やまずい棒(経営がまずいことにちなんで命名)などを販売しており、さながら煎餅屋の雰囲気を醸し出している。銚子電鉄の竹本社長はWEBインタビューで「(経理課長の悲痛な叫びで)ぬれ煎餅だけで年間売り上げが4億2000万円になった」と語っており、銚子電鉄におけるぬれせんべいの存在感がかなり大きいことがわかる。

銚子電鉄オンラインショップ ぬれせんべいをはじめとしたたくさんの商品を販売

なぜぬれせんべいが売れるのか

銚子電鉄のぬれせんべいは売れるのだろうか。理由の一つとして、銚子電鉄を支援するためということが挙げられるだろう。銚子電鉄は地方私鉄で、東京都心からも遠く、乗りに行って支援することは難しい。そこで、遠方の鉄道ファンや銚子電鉄の取り組みに共感した人がぬれせんべいを買う、と考えるのが自然である。いうならば、「崖っぷち鉄道会社だからせんべいが売れる」ということだ。

では、もし銚子電鉄が廃線して、「煎餅屋」になってしまったらどうなるのだろうか。現在のぬれせんべいにある「崖っぷち鉄道会社が販売している」という付加価値が失われ、せんべいは「ただのせんべい」になってしまう。ということは、銚子電鉄は「地方の煎餅屋さん」になってしまう。つまり、現在の銚子電鉄では、「崖っぷち鉄道会社」という付加価値はとても大きいのだ。

これに似た事例に、アイドルグループのTOKIOが挙げられる。彼らは、農業をしたり、島を開拓したり、生物の調査や保護活動を行ったり、離島に世界遺産の反射炉を再現するなど、非常にマルチに活動している。では、彼らに「アイドルやめろ」というとどうなるだろうか。彼らの「マルチに活動するアイドル」という付加価値が失われ、「マルチに活動するイケメンおじさんたち」となってしまう。彼らにとって、「アイドル」という付加価値は大きいのだ。

最後に

銚子電鉄にとって、ぬれせんべいは大きな収入源の一つだが、同時にぬれせんべいにとって「崖っぷちの銚子電鉄」は大きな付加価値となっている。この前提を忘れて、「収支がよくないから廃線」、「ぬれせんべい屋に業態転換すればよい」というのは分析が足りていないのではないだろうか。銚子電鉄にもコロナの影響が如実に表れており業績も厳しい。だから私たちは、ぬれせんべいを買って銚子電鉄を支えなければいけないのではないだろうか。

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