※サムネイルの画像はいわいずみフリークスからの転載

岩手県を始終点とする鉄道路線は大体紹介し終わりましたが、流石に省くわけにもいかないのでこの路線も取り上げていきたいと思います。

かつては日本一の秘境路線

岩泉線は、かつて岩手県に存在した鉄道路線で、山田線茂市駅から岩泉駅までを結んでいました。もともと大戦中に沿線近くで採れる耐火粘土を輸送するために建設されました。終戦後も建設は継続され、1972年までに終点の岩泉までが開通しています。

Wikiより転載。龍泉洞地底湖

近くに日本三大鍾乳洞の一つ、龍泉洞の最寄り駅という事もあって全通当時はそこそこ観光客でにぎわっていましたが、それもたった3年程度しか続かず、利用状況は悪くなる一方でした。そして1980年の国鉄再建法に基づいて特定地方交通線に指定され、廃線対象とされますが道路状況が悪いことや地元住民の必死の抵抗もあって何とか廃線を見送らせることに成功します。

ピーク時でさえ一日五往復

全通当時は旅客列車は一日五往復程度で地方盲腸線にしてはそこそこ本数がありましたが、1986年にそのうちの二往復を削減、4年前に山田線との接続を全く考慮しないダイヤに設定されたこともあって利用者はさらに減る一方でした。そのまま民営化を迎えてJR岩泉線として生まれ変わります。この時に日中に設定されていた一往復が定期化されて4往復となりましたが、乗客増にはつながらなかったのか4年後に廃止されてしまいます。

もはやバスの相手にもされなかった

実はこの路線の全通前から岩泉線唯一の目玉である龍泉洞に向かう盛岡発の高速バスがよりにもよって国鉄/JRバス東北によって運行されていました。その名は急行龍泉号。今は名を変えて早坂高原線として4往復程度走っています。2004年までは岩手県のバス事業者の一つ岩手県北交通と共同で運行していました。この早坂高原線は今も昔も岩泉・龍泉洞への最短経路であり、茂市経由は遠回りの上時間もかかるので乗客減は当然と言えば当然です。国鉄時代はバスも鉄道と共通の切符で買えたこともあってわざわざ茂市を回る行く人は鉄道ファン以外にほとんどいませんでした。

岩手県北交通は山田線もボコボコにしている

山田線のもう一つの起点宮古方面の輸送はそこそこ利用者がいたのですが、三陸鉄道北リアス線が開通してからは岩泉から小本へ向かう国鉄バス、陸中海岸線経由が宮古への最短ルートとなりました。どちらの都市に行くにも茂市経由が最短にならなくなった時点で、岩泉線はもはや見捨てられたも同然だったのです。

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震災前に一足先に不通、そして廃線へ

それでも何とか民営化後も生き延びた岩泉線ですが、乗客の減少に歯止めをかけることが出来ず、ついにはJR、ひいては日本の鉄道路線最下位を叩き出す数値を記録します。あまりにも人がいなさすぎる秘境路線、として逆に有名になり当時まだ存在した国鉄型車両を利用した盛岡直通の臨時列車、龍泉号が土休日や繁忙期を中心にときたま運転されていましたが、減少が僅かに鈍くなっただけで抜本的な解消にはなりませんでした。

 土砂崩れで脱線したJR岩泉線の列車=2010年7月31日、岩手県岩泉町
ちなみにこの被災したキハ110は修理を終えていまだに活躍している
(四国新聞より転載)

そして2010年、大雨の影響で岩泉線を土砂崩れが襲いました。走行中の運転士が視認して非常ブレーキを掛けたものの間に合わず、列車が土砂に突っ込み脱線してしまいます。この影響で岩泉線は終日不通となります。そしてこの日以来、岩泉線に列車は来ることはありませんでした。

道路にささげた押角トンネル

脱線事故後、JRと沿線自治体は岩泉線存続について協議しましたが、一年を通して100人も利用者がいない路線の復旧はJRの中で一番稼いでいる東日本でさえ嫌がりました。直後に起きた東日本大震災の影響で協議はいったん中止になりますが、協議再開後、東日本は廃止に同意してくれるなら並行する国道340号線の改良に協力する、という提案をします。こんな路線に金かけるくらいなら並行道路改良に金を出したほうがマシという嫌がりっぷりからいかに岩泉線がやばい路線なのかを象徴づけました。

Wikiより。改良前は国道だというのに1.5車線の古いトンネルが現役だった

そして岩手県側も道路改良にお金を出してくれるなら、と要求を呑んで合意し、2013年11月8日に国土交通省へ廃止届が提出されました。そしてその一か月後の年末に行った意見聴衆の結果、廃止時期が翌年4月1日へと繰り上げられ、正式に廃線となったのです。JR東日本で路線単位で廃線となった初の事例となりました。災害で不通になってから事実上のバス転換となり、そして廃線時期が繰り上がるという一連の流れは今思えばのちの大船渡線気仙沼線一部区間廃止の予行演習だったのでしょうか。

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岩手県公式HPより。鉄道時代の面影はどこにもない。

岩泉線廃止後、すぐさま国道340号の改良工事に取り掛かりますが、その際に岩泉線唯一のトンネルであった押角トンネルを拡張の上で道路用に転用することになります。ちょうど国道340号線が復興支援道路に指定されたこともあって工事は順調に進み、岩泉線廃止から6年後の2020年末に全通しました。このトンネルの開通により、押角峠の所要時間が14分も短縮され、岩泉線の代行バスも少しだけ所要時間が短くなったそうです。

しかしやはり上述の早坂高原線と陸中海岸線(の代替バス)がまだ現役であることから代行バスの利用者は岩泉町を除きほぼいないようです。いたとしても10名にも満たないのがほとんどです。加えて茂市で接続する山田線も全線通して運行する便は快速を含め4往復しかないことから利用しろというのが難しい状況です。この様子だとおそらく近いうちに代行バスもいずれ廃止になるでしょう。

なおこの岩泉線代替バスですが、茂市から岩泉病院までの全区間、JR東日本が発売するいわてホリデーパスの利用可能エリアとなっていますので、もし乗車の機会があったならこの切符でお得に利用しましょう。