こんにちは、AJR-NEWS.comライターのうしてつです。

まずは、お知らせからです。

私事ではありますが、現在「減便に伴うアンケート」を実施しています。

集計したアンケートは後日記事にするので、お答えいただければ幸いです。

では、本題に入りましょう。

前回の記事では東西線の2度の延伸について解説していきましたが、今回はこの連載のメインであると考える、京都市営地下鉄の現状について解説していきます。

京都市営地下鉄は儲かっているのか? それとも・・・

では、京都という世界有数の観光地を走る京都市営地下鉄は儲かっているのでしょうか?

答えは赤字です。

鉄道やバスには、100円の営業収入を得るのに、どれだけの営業費用を要するかを表す指数である、営業係数というのがあります。

この営業係数が100未満なら黒字、100以上なら赤字ということになりますが、京都市営地下鉄ではどうでしょうか?

烏丸線は黒字ですが、東西線が赤字であるということがわかります。

ちなみに今回紹介した営業係数はコロナ禍前の2013年のデータなので、古い情報なのですが、京都市が発表した2020年の決算は経常赤字が地下鉄では最大で89億円であることがわかり、京都市交通局はすでに300億円超の累積赤字が続き、京都市交通局が経営健全化団体に転落するという恐れがあります。

なぜ赤字が続くのか?

では、なぜ京都市営地下鉄はコロナ禍以前は外国人観光客が多いのに、赤字が続くのでしょうか?

実は京都市営地下鉄が赤字である理由には京都ならではの理由があります。

1,建設費が高かったから
2,開業年数が浅い(今の物価で建設された)
3,利用者数が少ない
4,コロナ禍

1,建設費が高かったから

フリー写真サイト・パブリックドメインQより

京都市営地下鉄が赤字である最大の理由は、建設費の高騰です。

京都は古都であるということで埋蔵文化財がいくつも見つかりました。まずこの時点から京都と東京や大阪・神戸などほかの地下鉄がある都市とは大きく違います。

また埋蔵文化財が発見された場合、文化財保護法により工事を中止して埋蔵文化財の調査を進めなければいけません。

当然、工事に遅れが出て開業が長引くなる分、工事の費用も高くなっていきます。

しかも、新たに埋蔵文化財がないかどうか慎重に工事することため工期が伸びやすいというデメリットもあります。

実際、東西線も平安遷都1200年記念事業の一環として1994年に開業する予定でしたが、文化財の調査が遅れたことにより1997年に延びこんだ経緯があります。

2,開業年数が浅い(今の物価で建設された)

ではここで、京都市営地下鉄で先に開業した烏丸線の開業年数と神戸市営地下鉄西神・山手線と大阪メトロ御堂筋線と東京メトロ銀座線の開業年数を比べてみましょう。

銀座線や御堂筋線は戦前の1930年代、西神・山手線(西神線)は1970年代ですが、烏丸線が1981年開業しました。

この時点で烏丸線が遅いであることがわかります。

御堂筋線・銀座線は戦前、西神線は高度経済成長期の物価の安い時期に建設されたことに比べ、烏丸線の北大路~京都を除く区間は比較的新しいの時期に建設されました。

さらに、高い建設費に加えて、東西線のように開業が遅れたのも経営状況が安定せず負債が多いことから、赤字が続く理由になりました。

3,利用者数が少ない

詳しくは後で説明しますが、京都の初乗り運賃は220円と全国の地下鉄の中では最高値です。

それが影響しているのか、京都市営地下鉄の利用者数は少なく、京都に来た観光客の大半は北は高雄・柊野(ひらぎの)から、南は京阪淀駅・JR長岡京駅まで路線網が充実している市バスが有力な手段となっており、観光客以外にも京都市民も市バスを利用する人が多く見られ、特に京都駅では清水寺・祇園へ行く路線(206系統)を中心にバスを待つ行列が多くみられます。

京都市バス(うしてつ撮影)

京都市民である私も、自宅近くの最寄の停留所から京阪の淀駅や高雄にも行けちゃったりしますね・・・

4,コロナ禍

最後の理由でもある、コロナ禍はどの鉄道路線にも言えることでしょう。

コロナの流行により、テレワークの増加・臨時休校の期間が長引き、利用者も大きく減りました。

これは京都市営地下鉄も例外ではありません。

京都市営地下鉄は赤字が続く上に、コロナ禍という二重苦が現れてきたことから、2008年以来の健全化団体に再転落という危機が訪れました。

京都市営地下鉄の運賃事情

先ほども説明した通り、京都の初乗り運賃は220円と全国の地下鉄の中では最高値です。

ではここで、地下鉄が走っている全国9都市の初乗り運賃を比較してみましょう。

札幌210円
仙台210円
東京メトロ170円
都営180円
横浜210円
名古屋210円
大阪メトロ180円
京都220円
神戸210円
福岡210円
全国の初乗り運賃比較(最安値と最高値に色を付けています)

かつては京都も横浜や名古屋などのように、公営地下鉄に多い210円が初乗り運賃でしたが、2019年10月の消費増税で220円に値上げされ、京都は日本一初乗り運賃が高い地下鉄になってしまいました。

ではなぜ京都が初乗り運賃最高値なのでしょうか?

答えは赤字の理由と一緒で、建設費が高かったからです。

京都は古都だということもあり、地下にはたくさんの埋蔵文化財が眠っています。また埋蔵文化財が発見された場合、文化財保護法により工事を止めて埋蔵文化財の調査を進めなければなりません。

この影響により建設費が上がり、建設に関するコストも上がります。

このようなことから、京都市営地下鉄は日本で最も初乗り運賃が高い地下鉄になりました。

脱赤字! 黒字化への取り組み

さて、ここまで京都市営地下鉄の運賃が高い理由や赤字の理由について紹介してきましたが、京都市も黒字に向けていくつかのプロジェクト・事業があります。

ではここで、京都市営地下鉄の黒字化への取り組みを見てみましょう。

1,駅ナカ事業

まず一つ目が、駅ナカ事業です。これは最近ではたくさんの駅や鉄道会社が取り組んでいますが、京都市でも2010年2月に四条駅に出店する8店舗を募集し、25店舗の募集がありました。8店舗の中には、クリスピークリームドーナツが京都府内では初出店となりました。同年7月には古都京都の地下という意味から、「コトチカ」という名前が命名。10月1日に晴れて開業しました。クリスピークリームドーナツでは400人の行列ができ、最大4時間待ちの大盛況となりました。

私は当時小学校1年生でしたが、親とクリスピークリームドーナツの行列にめちゃくちゃ並んで家で食べたっていうのは今でもはっきり覚えてますね・・・

四条駅の乗降客は最初の3日間が前年同期比で1日6500人、最終的に10月の乗降客数は4000人アップしました。

コトチカが好調だったということもあり、2010年度の地下鉄は43億円の黒字を達成しました。

その後、2011年5月には烏丸御池駅、2012年には京都駅が完成しました。

京都市は駅ナカビジネスで4億4500万円の収入をあげ、想定以上に経営改善が見られたとして運賃の値上げを当初は2013年度までにするとしていましたが、2014年度以降に値上げをするという結果になりました。

さらに、2013年には京都市の門川大作市長が山科駅や北大路駅にも設けると発言し、山科駅には2014年、北大路駅には2018年に開業させました。

コトチカ京都

2,救世主・萌えキャラ

京都市は、2010年に2018度までに1日あたりの乗客5万人増加という目標をたて、同年4月に「京都市地下鉄5万人増客推進本部」を発足させます。その下部組織として、市の職員19人による「若手職員増客チーム」を立ち上げ、「萌え系」のイベント等を通じて増客を目指し、「燃え燃えチャレンジ班」を発足させました。

そのチームで考案されたのが太秦萌というキャラクターです。

太秦萌は2011年に実施した、階段利用促進キャンペーンの応援キャラクターにいきなり抜擢されました。

2011年9月には太秦萌の幼なじみとして、烏丸線・松ヶ崎駅に由来した松賀咲と東西線・小野駅にちなんだ小野ミサ東西線のというキャラクターも登場しました。

ちなみに、太秦萌などのデザインは最初は交通局の職員の家族でしたが、2013年に京都のデザイン事務所・GK京都が「萌え」に媚びることなく多くの人に受け入れられるように位置づけし、イラストレーターの賀茂川さんがデザインしました。このころからこのプロジェクトは「地下鉄に乗るっ」という風に命名されました。

3人のデザインをした賀茂川さんですが、実は駅メモのキャラクターもデザインしてるんですよね・・・
これは私も初めて知りました。

その後も、京都市の各施設や百貨店・ゲームとのコラボやアニメの作成、ノベライズ、フィギュアの発売など、「地下鉄に乗るっ」は全国区になりました。

また、先ほども説明したコトチカ京都の中になる「コトチカ広場」では「地下鉄に乗るっ」のキャラクターを紹介するところもあります。

右から松賀咲、太秦萌、小野ミサ
「地下鉄に乗るっ」のキャラクター紹介(京都駅にて)

ちなみに
太秦萌の誕生日は交通局が設立した6月11日
松賀咲の誕生日は北山~国際会館間が開業した6月3日
小野ミサの誕生日は二条~醍醐間が開業した10月12日
という風に、京都市交通局に関する日付が誕生日となっています

あとがき

というわけで今回は、京都市営地下鉄の現状やなぜ運賃が高いのかや、赤字が続く理由についてまとめました。

私の出身地である、京都から生まれたキャラクターが全国で話題を集めるっていうことはかなりうれしいと思います。

さて、「京都市営地下鉄~過去とこれから~」もいよいよ最終回がやってきました。

最終回では京都市営地下鉄の未来について特集をします。

というわけで、今回はこの辺で失礼します。

それでは皆さんさようなら!